日々是暇

尾道という町①(カメラの向き)

初日から3日間、飽きることなくひたすら歩き回っている。迷路のような路地に迷いながら、裏路地をのぞけば気になる看板、お店。この町は目的地を決めずに歩いた方が良いかもしれない。心が動いた方へ進んで、偶然に感動した方が(その偶然の可能性がとても高い町でもある)。

僕はこの町に来てからというもの、カメラを縦に構えがちであることに気づく。

普段は山で景色の広がりを切り取りたいから、横に構えることが多かったのだけど、細い路地を撮るにはどうしても縦にせざるを得ない。逆に考えたら、カメラを縦に構える町は、素敵な路地に溢れた、素敵な町であると言えるか。

そして一歩海沿いへ出れば、カメラを横に構え直す。瀬戸内海と、対岸の向島を精一杯の広角で収める。

渡し舟を待つ女の子
渡し舟を待つ女の子

そんなときに、小学生高学年くらいの女の子が、自転車ですいーっと桟橋の方へ入っていった。

何の用があるんだろう?と思ったら、そのままそこで、向島への渡し舟を待っていた。

なんだろう、それが、僕にはとてもエモーショナルだった。

「舟に乗って家に帰る」

「日曜の夕方、みんなと遊んで帰る」という共通の記憶の中に、海と舟という知らない風景が差し込まれる。少しだけ知らない日常が、こんなに胸を揺さぶるのはなんでだろう。

また一週間、「少し違うもの」をたくさん、大切に見て、心を動かしていきたい。

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