この外に出られない屈辱的なゴールデンウィークを、いかに充実させようか。みんながあれこれ工夫をしたことでしょう。
僕の場合は、ずばり「源氏物語の読破」だった。そして完了した。疲れた……
今回、この日本最古の(恋愛)小説を読もうと思ったのは、角田光代さんが新訳を出したから。これが極めて読みやすくて、この機を逃したら一生源氏物語に触れないなと思って、一気に通読した。
まぁ、読んだは読んだのですが、これがこてこての恋愛小説でして、輝くばかりのイケメンで何をやらせても人並み以上の主人公、光源氏がなかなか全然好きになれなかった。須磨に流されたときは「少しは失敗して人間らしくあるじゃないか」とか思ったものの、京都ではみんなが待ち焦がれるわ、流されたところで別の女を作るわで、「なんだこいつ」と。
登場する女性はえらいんです。イケメンであろうが立場や事情があってかたくなに拒むのですが、光源氏が「そんなにつれないこと言うなよ」って言って強引に逢瀬をかわして、女性が「ひどいことを」と恨めしそうにする顔をみて、「それもまたいじらしいものです」―――って、「なんだこいつ」と。
基本的に、この繰り返し。かくして光源氏の愛人に囲まれた六条院が完成するのであった―――
しかし、紫の上という少女の頃から育て上げた最愛の女性が亡くなると、一気に生きる気力をなくす光源氏。やっと人間らしいじゃないかと。どんどん落ち込んでいって、もう出家したい死んでしまいたい―――というところで中巻終了。
そして下巻で光源氏は出てこないのである。死んで8年後にスキップしてしまうのである。
当然「はぁ?」と思うところでしょうが、この小説がすごいのが、中巻の最後に「雲隠」というタイトルだけの章がある。本文はない。このタイトルだけで、光源氏の死を暗示するという、すんごい仕掛けを使っているのです。
(諸説あって、「本文はあったのだが消失した」というのもあるのですが、僕は紫式部がわざとやったことだと思う)
そして下巻は光源氏とはカリスマ性において雲泥の差がある薫の君と匂君の女性争奪戦。ほとんど匂君に負けてしまう薫くんですが、この2人がこじれにこじれて、女性が何人か絶望に死んでいくという……
こんな感じなので下巻に関しては蛇足として嫌われることも多いそうなのですが、僕は泥臭くて人間味あふれていて、下巻が一番面白く読めた。
基本的には、男は猪突猛進で、女性が態度をしめさないとあっという間に恋の路頭に迷う。女性が何を考えているか分からず、暴走する……夏目漱石の登場人物にしてもそう。男は何も進化していないなと知れた、ゴールデンウィーク。非常に有意義。