日々是暇

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)

1969年、ウッドストックと同じ年に、ニューヨークのハーレムで、黒人による黒人のための音楽フェスティバル「 ハーレム・カルチャラル・フェスティバル 」。録画はされたが、今の今まで50年間、日の目をみることなく眠っていた……そんな貴重な映像を、フェスの映像(そして僕は轟音シアター!)、参加者や演者のインタビュー、当時のアメリカ(世界)情勢を絡めながら振り返る音楽ドキュメンタリー。昔NHKでやっていた「映像の世紀」を彷彿させられた。

フェスと言えば、最近の主流はポップスやEDM、ロックはまだちょっと押されっぱなしか。とにかく、みんなで手を上げて音にまみれる幸せを共有する場だと思う。どちらかと言えば平和な日本において、音楽は「共感」のためのものだ。

ただ、1969年のこのフェスはちょっと違う。もちろん、みんなと好きなミュージシャンの流行りの曲を聴くというのは今と同じだけど、その喜びの他に、不条理への「怒り」や「闘争」も混じっている。上げられた手には握りこぶしもある。

今よりも差別が厳しい時代。キング牧師、ジョン・F・ケネディ、マルコムX……黒人の代弁者が次々と暗殺され、黒人たちの中には沸々とマグマが溜まっていたのだろう。声であれサックスであれギターであれドラムスであれ、アンプが吐き出す音からはクソみたいな現実への抵抗が溢れている。

「白い奴らをぶったおす準備はいいか?」「戦う準備は出来ているか?」

ニーナ・シモンのMCはともすれば暴力的に聞こえるかもしれないけど、この声を上げて破壊したいほどの閉鎖感に、島国日本の僕は対面したことがない。その心を想像することも難しい。

ただ、映像を通して、確かにこのフェスがあった。音楽を共感のためだけではなく、闘争のために使われていた時代があった。そうしなきゃいけない世界があった。それを伝えてくれた、貴重な映像作品だった。

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