平野啓一郎さんの小説。母親から自由死したいという希望を告げられた主人公朔也。猛反対するも聞き入れられず、本心を知りたいと思うものの、母親はそれとは関係ない事故で死んでしまう。
喪失感から立ち直れない朔也は、バーチャルアバターとして母親を仮想の中に蘇らせる。果たして母親の本心とは……
読み始める前の認識が上の感じだったので、ミステリ感覚でスタートしましたが、これが良い意味で違うジャンル。
舞台は少し先の未来。自由死は合法化され、新自由主義は加速し、格差が今よりも拡大している世界。
母親の本心を探しながら、その途中で出会った母親の元同僚、アバター作家のイフィー、母親が愛した作家等と交流を重ねながら、喪失した心にひとつひとつ何かが埋まっていき、最後は前を向いて生きる決断をする。
結局のところ、母親の本心は分からない。というか、出会う登場人物ひとりひとりの本心も、分からない。というか、人間ってそんなものじゃないか。誰だって、誰にも話せない本心がある。分からないから、分からないけど、話して、少しでも分かろうとすること。それが他者と生きるということかもしれない。
本心にはたどり着けないものの、そういう決断をした心の断片には触れた主人公。その優しすぎる性格の主人公目線で、自問自答しながら一緒に成長していく小説だったと思う。
P.S.主人公の、自分の幸せの天秤が軽すぎるような気がしたけど、それも朔也くんの優しさなのかな…